東日本大震災10年

東日本大震災10年復興支援坂田記念ジャーナリズム賞

(2020年〜2021年)

【新聞の部】 
東日本大震災10年復興支援坂田記念ジャーナリズム賞(1件)

★河北新報社「東日本大震災10年取材班」
  代表=河北新報社編集局報道部長・
今里直樹)
  東日本大震災10年

 
【放送の部】
東日本大震災10年復興支援坂田記念ジャーナリズム賞(1件)
★岩手めんこいテレビ「奇跡と呼ばれなくなる日まで」取材班
 代表=岩手めんこいテレビ報道部担当部長・
佐々木))()
 奇跡と呼ばれなくなる日まで〜震災10年 釜石の軌跡〜
 

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別件の表彰について
 
なお、東日本大震災10年復興支援坂田記念ジャーナリズム賞を受賞した2社以外について、選考委員会から「持続的に震災報道に取り組んでこられたジャーナリストたちの矜持と姿勢に深甚なる敬意と称賛を表したい」との声が上がりました。当財団はこの意を受け、推薦を受け付けた全9社(受賞2社を除く)に対し、東日本大震災10年復興支援奨励賞と副賞(各10万円)を贈ることにしました。
実施要領になかったもので、該当の9社には直接お送りさせていただきます。



東日本大震災10年復興支援坂田記念ジャーナリズム賞
推薦・授賞理由

 
【新聞の部】 
東日本大震災10年復興支援坂田記念ジャーナリズム賞
 河北新報社「東日本大震災10年取材班」
   東日本大震災10年
 

〔推薦理由〕
 河北新報社は、岩手、宮城、福島の被災県をすべてカバーする被災地唯一の地元紙という特性を生かし、東日本大震災報道に一丸となって取り組み、関連記事は2021年6月中旬までの1年間で7000本を超え、過去10年間では約15万本に上る。
 震災10年報道は2020年7月11日の月命日にスタート。大震災と東京電力福島第1原発事故をめぐる10年の動きを検証する6本の長期連載、ドキュメント、震災関連死の調査報道などを、月命日ごとに多角的に展開した。
 多岐にわたる復興の問題点を明らかにするとともに、今なお「時が止まったまま」の遺族や不明者家族に寄り添い、思いを丁寧にすくいとってきた。宮城県南三陸町の防災庁舎で生き延びた11人全員に聞き取ったドキュメントは津波の脅威はもちろん、人間の底知れぬ強さと優しさを伝える貴重な証言になった。
「震災を忘れない」「決して忘れさせない」という風化防止に向けた地元紙の気概を示す一連の報道は、復興に向けた被災地の歩みと被災者の思いをくまなく伝えた貴重な記録になっていると考える。
 

[授賞理由]
 単行本化された「原発漂流」や報道写真集「復興の歩み」に象徴される圧倒的な取材力に感心した。特に、震災前、震災後、その10年後の各地の写真を対比した「復興の歩み」の企画は、あらためて「百聞は一見にしかず」の言葉を想起させるものがある。新聞取材の総合力を高く評価できる。
東日本大震災は阪神淡路大震災にならぶ地震起因の大災害で、その規模があまりにも巨大だが、今後の防災「教本」として、直接の現地読者だけではなく、対外的にも記録や提言として発信できる事後報道が求められる。この連載記事はそれに十分に応える質と量であり、被災地の「新聞社の仕事」というだけではない、ジャーナリズムの本質としての評価ができる。


【放送の部】
東日本大震災10年復興支援坂田記念ジャーナリズム賞
 岩手めんこいテレビ「奇跡と呼ばれなくなる日ま
で」取材班

 奇跡と呼ばれなくなる日まで〜震災10年 釜石
の軌跡〜

 
〔推薦理由〕
 東日本大震災の教育現場では対照的ともいえる二つの出来事が起きていた。ほとんどの小中学生が津波から避難できた”釜石の軌跡”(岩手)と、児童ら84人が犠牲になった”大川小の悲劇”(宮城)だ。その双方の当事者らの対面が10年目にして実現。互いの思いが氷解する瞬間を、岩手めんこいテレビは放送局で唯一記録した。
 その姿から見えてきたのは、当事者にしかわからない深い葛藤がそれぞれあること、そして事実を一面的にとらえるだけでは、真に教訓を得ることにはならないということだった。この番組では両者の交流を軸に、震災当時、釜石東中の生徒で、現在は語り部を務める女性の心情の変化や、両校の当事者間で深まる連携、さらには釜石でなぜ震災前から防災教育が広がっていたのかをまとめている。
 「決して悲しみを繰り返してはならない」との強い思いを胸に、10年間歩み続けてきた人たちの姿からは、現在の学校防災、地域防災にはまだまだ足りないものがあることを思い知らされる。その一方、防災は本来生活に不可欠なものであり、難しく考えすぎず、できることから“日常”として取り組むことが大切と再認識させられる。
2万人近い犠牲を無駄にしないために、私たちは今何をすべきなのか。それを市民とともに考える機会になればと願いながら、他社にはない独自の切り口で制作された番組である。
 
[授賞理由]
 「釜石の奇跡」と呼ばれるようになった津波避難当事者である菊池のどかさんの、震災後の活動を軸にしながら、復興の課題に多角的にアプローチすることで、深みのあるドキュメンタリー作品になった。(悲劇の)大川小の遺族との対面・交流は、独自性にすぐれ、菊池さんの心の葛藤を映像で描き出している。また、地域の防災力向上のための教材開発に着手した菊池さんを通し、奇跡だけではなく「軌跡」に目を凝らした作品だ。
 「釜石の奇跡」の脱出劇がどう神話化されるのか、神話化されてきた「奇跡」の語り部・菊池さんの活動と教育にスポットを当てたことが成功理由だろう。「釜石の奇跡」に対する「大川小の悲劇」を対置させ、それを菊池さん自身の語りとして構成している点で、明確なメッセージが伝わってくる。震災「美談」報道のメタ分析といえる視点が優れており、防災教育の教材として有効利用されるべき作品でもある。